ワクチンの無い世界

    Webを漁ると、ワクチンの効用に疑義を唱えるサイトが、かなり見つかる。こんなものに引っかかって、我が子のワクチン接種を拒否する様な親も居るようだ。児童虐待であるだけでなく、我が子が、ワクチン接種前の人様の子供に病気を感染させる可能性も生ずるのであるから、反社会的な行為でもある。

   反ワクチンの言説が広まる様になったのは、逆説的ながら、我々がワクチンを初めとする伝染病抑制の為の医療システムの恩恵に十分に浴していて、伝染病の心配をしなくても良い社会に生きて居るからだろう。伝染病の猖獗の体験が社会から失われると、その幸福を支えるシステムへの感謝も薄らぐ。そして、稀にワクチン接種に伴う事故ーーらしきものーーが発生すると、マスメディアは一斉にそれを報ずる。しかし、そのワクチンが救っている人命の膨大であることは伝えられない。
   医療関係者はこの様な状況は不満であろうが、しかし、ワクチンの必要性さえ理解されにくくなるほどに安全な社会を作り上げたことは、誇っても良いのではないかと思う。

   今、西アフリカで、エボラ出血熱の大規模な感染が発生し、治療に当たる医療関係者を含む多くの人々が命を落としている。ワクチンも有効な治療法も見つかっていないからである。
   ワクチンのない世界とは、こういう世界である。

 http://www.nytimes.com/2014/08/08/world/africa/dont-touch-the-walls-ebola-fears-infect-hospital.html?module=Search&mabReward=relbias%3Ar%2C%7B%222%22%3A%22RI%3A14%22%7D